Japanische Klassiker mit Furigana
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こころ
こころ
Lesen Sie こころ von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.915 Zeichen · 322 Bildschirme
私は今度もあるいはそうなるかも知れないと思った。しかし医者はただ用心が肝要だと注意するだけで、念を押しても判然した事を話してくれなかった。私は不安のために、出立の日が来てもついに東京へ立つ気が起らなかった。
「もう少し様子を見てからにしましょうか」と私は母に相談した。
「そうしておくれ」と母が頼んだ。
母は父が庭へ出たり背戸へ下りたりする元気を見ている間だけは平気でいるくせに、こんな事が起るとまた必要以上に心配したり気を揉んだりした。
「お前は今日東京へ行くはずじゃなかったか」と父が聞いた。
「ええ、少し延ばしました」と私が答えた。
「おれのためにかい」と父が聞き返した。
私はちょっと躊躇した。そうだといえば、父の病気の重いのを裏書きするようなものであった。私は父の神経を過敏にしたくなかった。しかし父は私の心をよく見抜いているらしかった。
「気の毒だね」といって、庭の方を向いた。
私は自分の部屋にはいって、そこに放り出された行李を眺めた。行李はいつ持ち出しても差支えないように、堅く括られたままであった。私はぼんやりその前に立って、また縄を解こうかと考えた。
私は坐ったまま腰を浮かした時の落ち付かない気分で、また三、四日を過ごした。