Japanische Klassiker mit Furigana
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こころ
こころ
Lesen Sie こころ von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.915 Zeichen · 322 Bildschirme
母はその時の私の言葉を信じていた。その時の私は先生からきっと返事があると母に保証した。しかし父や母の希望するような返事が来るとは、その時の私もまるで期待しなかった。私は心得があって母を欺いたと同じ結果に陥った。
「もう一遍手紙を出してご覧な」と母がいった。
役に立たない手紙を何通書こうと、それが母の慰安になるなら、手数を厭うような私ではなかった。けれどもこういう用件で先生にせまるのは私の苦痛であった。私は父に叱られたり、母の機嫌を損じたりするよりも、先生から見下げられるのを遥かに恐れていた。あの依頼に対して今まで返事の貰えないのも、あるいはそうした訳からじゃないかしらという邪推もあった。
「手紙を書くのは訳はないですが、こういう事は郵便じゃとても埒は明きませんよ。どうしても自分で東京へ出て、じかに頼んで廻らなくっちゃ」
「だってお父さんがあの様子じゃ、お前、いつ東京へ出られるか分らないじゃないか」
「だから出やしません。癒るとも癒らないとも片付かないうちは、ちゃんとこうしているつもりです」
「そりゃ解り切った話だね。今にもむずかしいという大病人を放ちらかしておいて、誰が勝手に東京へなんか行けるものかね」