Japanische Klassiker mit Furigana
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こころ
こころ
Lesen Sie こころ von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 160.915 Zeichen · 322 Bildschirme
妙に不安な心持が私を襲って来た。私は書物を読んでも呑み込む能力を失ってしまった。約一時間ばかりすると先生が窓の下へ来て私の名を呼んだ。私は驚いて窓を開けた。先生は散歩しようといって、下から私を誘った。先刻帯の間へ包んだままの時計を出して見ると、もう八時過ぎであった。私は帰ったなりまだ袴を着けていた。私はそれなりすぐ表へ出た。
その晩私は先生といっしょに麦酒を飲んだ。先生は元来酒量に乏しい人であった。ある程度まで飲んで、それで酔えなければ、酔うまで飲んでみるという冒険のできない人であった。
「今日は駄目です」といって先生は苦笑した。
「愉快になれませんか」と私は気の毒そうに聞いた。
私の腹の中には始終先刻の事が引っ懸っていた。肴の骨が咽喉に刺さった時のように、私は苦しんだ。打ち明けてみようかと考えたり、止した方が好かろうかと思い直したりする動揺が、妙に私の様子をそわそわさせた。
「君、今夜はどうかしていますね」と先生の方からいい出した。「実は私も少し変なのですよ。君に分りますか」
私は何の答えもし得なかった。
「実は先刻妻と少し喧嘩をしてね。それで下らない神経を昂奮させてしまったんです」