Japanische Klassiker mit Furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme
鶴子は今朝マダム、シュールの手紙を受取り、このホテルに来て食卓の椅子につく時まで、自分の生涯にかくの如き大変動が起ろうとは夢にだも思っていなかった。運命ほど測りがたいものはない。鶴子はマダム、シュールの談をきいている中、突然何物かに誘惑せられたように、唯ふらふらと遠いところへ往きたくなったのである。往った先の事はよかれあしかれ、鶴子は今住む家の門を出る事が自分の生涯をつくり直す手始だと日頃から心づいてはいたものの、きょうが日までこれを決行する機会がなかった。一時は深く絶望して何事も皆自分が為した過の報いとのみ思いあきらめ、一日も早く年をとって、半生の悔いと悲しみとを茶のみばなしにする日の来る事を待つより外はないと思っていたが、今突然意外な機会が目の前に現われて来たのを見ては、とかくの思慮を費す暇もない。日頃因循していただけ、障碍が起ったなら、極力これを排斥して思うところを決行しようという元気さえ出て来たような心持になった。
食事の後廊下の長椅子に並んで腰をかけ珈琲を啜りながら、懇談することまた一時間ばかり。鶴子はホテルを出て梅雨晴の俄に蒸暑くなった日盛りをもいとわず、日比谷の四辻から自動車を倩って世田ヶ谷に往き良人の老父をたずねて、洋行のはなしをすると、老父はかつて大学教授のころ両三度シュール博士に面談