Japanische Klassiker mit Furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme
」と囁き聞かせ、「差しつかえはないだろう。今夜は晩いからね。僕の知ってる処がいいだろう。それとも君江さん。どこか知っているなら、そこへ行こう。」
思いがけない矢田の仕返しに、さすがの君江も返事に困り、「いいえ。何処だってかまわないわ。」
「じゃ、阪下で降りよう。尾沢カッフェーの裏で、静な家を知っているから。」
君江はうなずいたまま窓の外へ目を移したので、会話はそのまま杜絶える間もなく車は神楽阪の下に停った。商店は残らず戸を閉め、宵の中賑な露店も今は道端に芥や紙屑を散らして立去った後、ふけ渡った阪道には屋台の飲食店がところどころに残っているばかり。酔った人たちのふらふらとよろめき歩む間を自動車の馳過る外には、芸者の姿が街をよこぎって横町から横町へと出没するばかりである。毘沙門の祠の前あたりまで来て、矢田は立止って、向側の路地口を眺め、
「たしかこの裏だ。君江さん。草履だろう。水溜りがあるぜ。」
石を敷いた路地は、二人並んでは歩けないほどせまいのを、矢田は今だに一人先に立って行ったら君江に逃げられはせぬかと心配するらしく、ハメ板に肱や肩先が触るのもかまわず、身を斜にしながら並んで行くと、突当りに稲荷らしい小さな社があって、低い石垣の前で路地は十文字にわかれ、その一筋はすぐさま石段になって降り行くあたりから、その