Japanische Klassiker mit Furigana
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つゆのあとさき
つゆのあとさき
永井 荷風
Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme
」
女中は廊下の突当りから、厠らしい杉戸の前を過ぎて、瓦塔口の襖をあけ、奥まった下座敷の四畳半に案内した。今しがたまでお客がいたものと見え、酒のかおりと共に、煙草の烟も籠ったままで、紫檀の卓の溝には煎豆が一ツ二ツはさまっていた。女中は片隅に積み載せた座布団を出し、「ただ今綺麗にいたします。やっと今方片づいた処なんで御在ますよ。」
「大した景気だな。」
「いいえ。相変らずで仕様が御在ません。」と女中はお定まりの茶菓を取りにと立って行く。
「すこし明けようじゃないか。」
「蒸し蒸しするわねえ。」と君江はいざりながら手を伸して障子を明けると、土庇の外の小庭に燈籠の灯が見えた。
「あら、いいわね。芝居のようだわ。」
「カッフェーとはまた別だな。これが江戸趣味ッていうんだろうな。」と矢田は沓脱石の上に両足を投出して煙草へ火をつけた。
植込を隔てて隣の二階の窓が見える。簾がおろしてあるが障子の上に、島田に結った女が立って衣服をぬいでいるらしい影のありあり映っているのを見て、君江はそっと矢田の袖を引いたが、それと同時に艶しい影は雲のように大きく薄くなったまま消え去って、かすかな話声ばかりになった。