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Japanische Klassiker mit Furigana

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つゆのあとさき

つゆのあとさき

永井 荷風

Lesen Sie つゆのあとさき von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.725 Zeichen · 148 Bildschirme

Aozora Bunko

うっちゃってお置きなさい。」と徐に石摺の古法帖を畳んだ。

鶴子は涙を見せまいと台所へ行って見ると、老人の言った通り、酒屋の男が醤油の壜を置いて立去るところであった。勝手口は葡萄棚のかげになって日の光も和げられ、竹藪の間から流れて来る風はひやりとするほど爽かである。女中部屋は雇婆が出がけに掃除をして行ったものと見え、火鉢の灰もならしたまま綺麗に片づいている。鶴子は酒屋の男の去った後あたりにはもう誰もいないと思うと、こらえていた涙が一時に溢れ落るのを急いでハンカチで押えた。ここの家のお父さまは何も知らずにいらっしゃるのであるが、自分と進との間柄は今では名ばかりの夫婦で、入籍するの、しないのというような状態ではない。夫の進は一昨日家を出たなり今夜も多分帰って来ないであろう。この二、三年原稿の製作を口実にして随意に外泊することはもう珍しくはない。いずれ二、三日すれば帰って来るであろうが、今のような状況では、自分を正妻にして籍を入れる事をまさかに拒みはしまいけれど、さして喜びもしない事は言わずと明である。事によればかえって迷惑そうな顔をしないとも限らない。