Japanische Klassiker mit Furigana
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オリンポスのかじつ
オリンポスの果実
田中 英光
Lesen Sie オリンポスの果実 (オリンポスのかじつ) von 田中 英光 (たなかひでみつ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.277 Zeichen · 147 Bildschirme
しかし、それはその時に、沸き上がった感情です。あなたに対しては、心の中で、すでに、愛さなければならないという規範を、打ち樹てていたと思います。
ホノルル・ブロオドウェイの十仙店で、ぼくは、紅のセエム革表紙のノオトを買いました。初めて、米国の金でした買物、金五十仙也。ぼくは、それをあなたとの、日記帳にしようと思って厭らしく、紅い色のものを買ったのです。しかし、それも後から憶えば買わなかったほうが、いや買ったにしても、なんにも書かぬ白紙のなかに、記憶だけを止めておいたほうが、良かった結果になりました。
翌月の午後は、個人外出を許され、船の出帆時刻は、確か、七時でしたが、ひとりぼっちで歩いていても、面白くなく、帰ったならば、案外また、あなたに逢えるかとも思うと、四時頃からもう帰船しました。
午前中の甲板には、銭拾いの土人達が多勢、集まって来ていて、それが頂辺のデッキから、真ッ逆様に、蒼い海へ、水煙りをあげて、次から次へ、飛びこむと、こちらで抛った幾つもの銀貨が海の中を水平に、ゆらゆら光りながら、落ちて行く。それを逸早く、銜えあげたものから、ぽっかりぽっかりと海面に首を出し、ぷうっと口々に水を吐きながら、片手で水を叩き、片手に金をかざしてみせる。