Japanische Klassiker mit Furigana
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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
Lesen Sie フレップ・トリップ von 北原 白秋 (きたはらはくしゅう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.698 Zeichen · 293 Bildschirme
揺れ揺れ帆綱よ
フレップの実は赤く、トリップの実は黒い。いずれも樺太のツンドラ地帯に生ずる小灌木の名である。採りて酒を製する。所謂樺太葡萄酒である。
揺れ揺れ帆綱よ
心は安く、気はかろし、
揺れ揺れ、帆綱よ、空高く……
おそらく心からの微笑が私の満面を揺り耀かしていたことと思う。私は私の背後に太いロップや金具の緩く緩くきしめく音を絶えず感じながら、その船首に近い右舷の欄干にゆったりと両の腕をもたせかけている。
見ろ、組み合せた二つのスリッパまでが踊っている。金文字入りの黒い革緒のスリッパが。
心は安く、気はかろし、
揺れ揺れ、帆綱よ、空高く……
私の今度の航海は必ずしも物の哀れの歌枕でも世の寂栞を追い求むる風狂子のそれでもなかった。ただ未だ見ぬ北方の煙霞に身も霊もうちこんで見たかったのである。ほとんど境涯的にまで、そうした思無邪の旅ごころを飽満さしたかったのだ。南国生れの私として、この念願は激しい一種の幻疾ですらあった。いまこそ私は年来の慾望を果し得ることを喜んでいい。私はまさしく樺太観光団の一員として、この壮麗な高麗丸の甲板上にある。
心は安く、気はかろし、
揺れ揺れ、帆綱よ、空高く……