Japanische Klassiker mit Furigana
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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme
涙金を頂戴してそれでお終いよ。しかし俺はまだ絶望はしなかった。あの晩が解散会よ。解散のどさくさで誰が何を持ち出した、誰がいくら胡麻化したと、酔いが廻るにつれて暴露し合い出して、最後の時分は宴席のあちこちで殴り合いさ。浅間しいもんだ。俺の馬鹿正直な性格は誰も知ってるから、俺には何とも言やしない。俺は宴半ばにして、大量の胡麻化しを暴露されて殴られた会計係の老人を抱えて、駅まで送ってやった。この老人はもともと非常に狡猾な奴だった。俺はせんからそれを知っている。それにも拘らず俺は酔っぱらった彼を抱えて駅まで運んでやった。運んでやる義理合いはなかったんだ。ぐにゃぐにゃする老人の体を苦労して運びながら、俺は何の情熱でこんなことをしているのかとふと疑う気持が起った。しかし俺は唇を噛むような気持で、自分にその時言い聞かせた。善いことのみを行え。悪いことから眼をそむけろ。困った人を見れば救ってやれ。人に乞うな。人から奪うな。人にすべてを与えよ。――そう口のなかで繰り返して呟きながら俺は何の喜びもなく老人の体を運んでいた。ほんとに何の喜びもなく!
駅に着いて電車の中に老人を押し込んだ時、扉がしまる一寸前だったが、老人は黄色い歯をむき出して俺にささやいた。