Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Lesen Sie ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.411 Zeichen · 263 Bildschirme
お前さんは善い男だよ、ってな。
俺を歩廊に残して電車は出て行った。俺は何故か醜く亢奮してやたらに線路に唾をはき散らしていた。俺は酒のせいか嘔きたい気持を一所懸命に押えていたのだ。それから次の電車に乗ってお前と会ったな。お前にあの時外套をやったのは、お前が寒そうにしていたからだけじゃない。俺はもう一度何かを確めたかったのだ。あのもやもやしたものを判然させたかったのだ。ささやいた時のあの老人の嘲けるような笑い顔が、しつこく頭にその時もこびりついていた。
翌朝俺が外套の件で後悔したとお前は思うか。
それよりも渋谷の駅のことをお前に話そう。あの時俺は偶然酔い倒れているお前を見つけたのだ。お前というより外套を。お前からあの時、追剥だと言われた時、俺は実は身体のすくむような戦慄が身体を奔り抜けるのを感じたのだ。しかしそれが疑似の戦慄であることを、俺はその瞬間でも意識していた。だってもともと俺の外套だからな。そして、これが大事なことだが、その戦慄は贋物であったにしろこの俺にはぞっとするほど気持が良かったのだ。その感じは、実に俺にとって新鮮極まるものだった。俺は寝ているお前の体から離れて行く時程、足が軽かったことは近来にない。