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Japanische Klassiker mit Furigana

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うえすぎけんしん

上杉謙信

吉川 英治

Lesen Sie 上杉謙信 (うえすぎけんしん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.102 Zeichen · 256 Bildschirme

Aozora Bunko

ただ或るものを、後日に固くちかいながら、雲のように、山また山を越えていた。更に、詳報が入った。

「敵は、割ヶ嶽を陥すと、城郭を焼払い、石垣も城壁も、跡かたもなく打壊して、はや甲州へ退去したとの事です。城中のお味方は全滅をこうむりましたものの、敵方の死傷は数倍にのぼり、甲軍の名だたる大将、原美濃守、加藤駿河守、浦野民部などまで傷を負い、とりわけ原美濃守は、この一戦に十三創の重傷で後退したといわれ、また同じく敵方の旗本、新海又三郎、辻六郎兵衛は討死。多田淡路守もまた討死と聞えておりまする」

せめてもと、謙信に向って、つぶさに戦況を告げる早打ちの者に、

「そうか」

と、答えは、依然、短かった。しかし、この言葉をかさねるたびに、彼の語気は、静かに、荘重に、何かしら濁りの澄んでくるようなものがあった。

詳報がつたわると、全軍のうえに、明らかな動揺がうねった。沈湎、馬上に暗涙を嚥む老将もあれば、憤涙を拳で拭って、

「残念っ」

と、声を放って哭く多感な旗本輩もある。

荷駄、小卒の端までが、口々にいうことには、

「このまま、越後へ帰るのか」

であった。

そしてまた、

「空しくは帰られぬ!」