Japanische Klassiker mit Furigana
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ちよこ(さん)
千世子(三)
宮本 百合子
Lesen Sie 千世子(三) (ちよこ(さん)) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.906 Zeichen · 54 Bildschirme
あの人と来たんです。
でも他所に用がまだ有るんだって京橋へ行きましたよ!
「へえ、わざわざ用を作ったんですよ、
そうにきまってますともね。
あの方はそう親しくない人なんかの家へ行きそうない様子ですもの、
引込思案らしい方ですものねえ。
「そりゃあ、そうかもしれませんよ、
あの人ではね!
それが又あの人の良い処なんだもの。
篤はその人の顔を思い出そうとする様な目差しをしながら云った、そしてまるで気を変えた様に千世子の指のオパールを見ながら声の練習でもする様に気をつけて節まわしよくするすると話し出した。
「此頃体の具合はどうなんです。
少し眼が窪んだ様ですねえ、
夏まけでもするんでしょうか。
「いいえね夏まけってんでもないんだけれ共四月から五月にかけてきっと頭の工合を悪くするんですよ。
もう四月の濃い空気が私にのしかかって来る様に重うく感じて来るともう少しずつ悪くなって行くんですから。
それでもね、じきなおるんですよ。
おととしだか神経衰弱をやったのが癖みたいになってねえ。
源氏物語りなら『御物の化』でもって――
陽気な声で千世子は笑った、そして手をのばして篤が今まで読んで居た本の頁をわけもなくめくったりした。