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Japanische Klassiker mit Furigana

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なんぽうゆうしん

南方郵信

中村 地平

Lesen Sie 南方郵信 (なんぽうゆうしん) von 中村 地平 (なかむらちへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.899 Zeichen · 42 Bildschirme

Aozora Bunko

と、誰かが必ず口火をきって言いだすからである。

旦那の鼻といえば、実に異様である。まるで骨のない軟体動物のようにグニャリとしていて、しかも、先端はまっ黒い、立派な髭の中央部を全くおし隠してしまうほど、低く、長く垂れさがっている。

「それがな、美しか女子の前に行くと、だしぬけに居ずまいを正すげな」

誰かが愚鈍な声で鼻の噂をし始めると、辺りにいる百姓たちは、どうしても笑いがとまらなくなって困ってしまう。手拭いを姉さんかぶりに、久留米絣の着物の裾から赤いゆもじの端を垂らしている若いお主婦さんや、齢頃の娘たちは、笑いをおさえるのが苦しくて、畑の上をころげまわりたい気もちにさえなってしまう。

一体に楽天的で、屈託のないこの地方の百姓たちは、根も葉もない好色な噂話を、いかにもほんとうらしく、開け放してしゃべるのが好きなのである。鼻の噂にしても、旦那の乗馬姿が消えたあとでは、誰かが必ずしゃべり始めるから、一年を通じてみると同じい話が百回も百五十回も繰り返されるわけである。しかし、誰もあきる者もいない。まるで初めてその話を耳にでもするような、興味と笑い声とで興奮してしまうのである。