Japanische Klassiker mit Furigana
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げんばくししゅう
原爆詩集
峠 三吉
Lesen Sie 原爆詩集 (げんばくししゅう) von 峠 三吉 (とうげさんきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.927 Zeichen · 43 Bildschirme
白布を一枚宛ほどき最後のガーゼをめくると
ひとつの臓腑であった両眼が、そのままのかたちで癒えてうすいしずくをしみ出し
失った妻子のことをいう指先が手巾をさぐって顫えていた
〈ここはどこ、どんなところです?〉死体置場から運ばれて来て
最初に意識をとり戻したときと同じ言葉を
また口にしながら
太い青竹をとりなおし、ゲートルの脚先でしきいをさぐり
そろそろと出ていった
――こうされたことも共に神に免されねばならぬ――
――ひとり揉めば五十円になる、今に銀めしをごちそうします――
カトリックに通い、あんまを習い、すべての遍歴は年月の底に埋れて
ある冬近い日暮れ
束ね髪の新しい妻に手をひかれた兵隊服の姿を電車の中から見た
〈ここはどこ、どんなところです?〉それは街の騒音の中で
自分の均衡をたしかめるように立止り
中折帽の顔だけを空の光りへ向け
たえず妻に何かを訊ねかけているように見えた
さらに数年、ふたたび北風の街角で向うからやってくる
その姿があった
それは背中を折りまげ予備隊の群をさけながら
おどろくほどやつれた妻の胸にしっかりと片腕を支えられ
真直に風に向って
何かに追いつこうとする