Japanische Klassiker mit Furigana
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うもんとりものちょう
右門捕物帖(三)
佐々木 味津三
Lesen Sie 右門捕物帖(三) (うもんとりものちょう) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 241.558 Zeichen · 480 Bildschirme
右門捕物帖
1
――その第三十番てがらです。
事の起きたのは新緑半ばの五月初め。
さみだれにかわずのおよぐ戸口かな、という句があるが、これがさみだれを通り越してつゆになったとなると、かわずが戸口に泳ぐどころのなまやさしいものではない。へそまでもかびのただようつゆの入り、というのもまんざらうそではないくらい、寝ても起きても、明けても暮れても、雨、雨、雨、雨……女房と畳を新しく替えたくなるというのもまた、このつゆのころです。
しかし、取り替えようにもあいにくと妻はないし、伝六はあいかわらずうるさいし、したがってむっつり名人のきげんのいいはずはない。
「四谷お駕籠町比丘尼店平助ッ」
「…………」
「平助と申すに、なぜ返事をいたさぬか!」
「へえへえ。鳥目でござえますから、どうかもっと大きな声をしておくんなせえまし……」
お番所同心控え席の三番、それが名人右門の吟味席です。その控え席でそこはかとなくほおづえつきながら、わびしく降りつづけている表の雨を見ながめていると、隣二番のお白州、これが右門とは切っても切れぬ縁の深いあばたの敬四郎の吟味席でした。その二番の席で、敬四郎が何を吟味しているのか、しきりといたけだかになってどなりつけているのが聞こえました。