Japanische Klassiker mit Furigana
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やまとじ・しなのじ
大和路・信濃路
堀 辰雄
Lesen Sie 大和路・信濃路 (やまとじ・しなのじ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.165 Zeichen · 115 Bildschirme
そんな山の奥ぶかくに、彼女がまだ生前とすこしも変らない姿で、なんだか道に迷ったような様子をしてさまよいつづけているような気もしてならない。だが、それが山のどこいらであるのか全然わからないのだ。……
そんなことを考えつづけていると、突然、誰か落葉を踏みながら自分のほうに足早に近づいてくるものがある。見ると、文を挿んだ梓の木を手にした文使いである。ふいと愛人の文を自分に届けに来たような気がして、おもわず胸をおどらせながら立ち止まっていると、落葉の音だけをあとに残してその文使いは自分の傍を過ぎていってしまう。突然、亡き愛人と逢った日の事などが苦しいほど胸をしめつけてくる。
そういう情景がいかにもまざまざと目の前に蘇って来るようであります。それだけで好い。その軽の村がどういうところであるかも、その歌がおのずから彷彿せしめている。その藤原京のころには、京にちかい、この軽のあたりには寺もあり、森もあり、池もあり、市などもあったようであります。その死んだ愛人などもよくその市に出て、人なかを歩いたりしたこともあったらしい。そしてその路からは畝傍山がまぢかに見え、そのあたりには鳥などもむらがり飛んでいたのでありましょう、――今もまだその軽の村らしいものが残っております。