Japanische Klassiker mit Furigana
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やまとじ・しなのじ
大和路・信濃路
堀 辰雄
Lesen Sie 大和路・信濃路 (やまとじ・しなのじ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.165 Zeichen · 115 Bildschirme
あてが一人でいで上げるのだすがなあ、そのときのせわしい事やったらおまへんなあ。」
「そうお。その時分、柿を食べにきたいわね。」
「ほんまに、秋にまたお出でなはれ。この頃は一番あきまへん。なあも無うて……」
「でも、いろんな花がさいていて。綺麗ね……」
「そうだす。いまはほんまに綺麗やろ。そやけれど、あこの菖蒲の咲くころもよろしいおまっせ。それからまた、夏になるとなあ、あこの睡蓮が、それはそれは綺麗な花をさかせまっせ。……」そう言いながら、急に少女は何かを思い出したようにひとりごちた。「ああ、そやそや、葱とりに往かにゃならんかった。」
「そうだったの、それは悪かったわね。はやく往ってらっしゃいよ。」
「まあ、あとでもええわ。」
それから二人は急に黙ってしまっていた。
僕はそういう二人の話を耳にはさみながら、九体仏をすっかり見おわると、堂のそとに出て、そこの縁さきから蓮池のほうをいっしょに眺めている二人の方へ近づいていった。
僕は堂の扉を締めにいった少女と入れかわりに、妻のそばになんということもなしに立った
「もう、およろしいの?」
「ああ。」そう言いながら、僕はしばらくぼんやりと観仏に疲れた目を蓮池のほうへやっていた。