Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やまとじ・しなのじ

大和路・信濃路

堀 辰雄

Lesen Sie 大和路・信濃路 (やまとじ・しなのじ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.165 Zeichen · 115 Bildschirme

Aozora Bunko

少女が堂の扉を締めおわって、大きな鍵を手にしながら、戻ってきたので、

「どうもありがとう。」と言って、さあ、もう少女を自由にさせてやろうと妻に目くばせをした。

「あこの塔も見なはんなら、御案内しまっせ。」少女は池の向うの、松林のなかに、いかにもさわやかに立っている三重塔のほうへ僕たちを促した。

「そうだな、ついでだから見せて貰おうか。」僕は答えた。「でも、君は用があるんなら、さきにその用をすましてきたらどうだい?」

「あとでもええことだす。」少女はもうその事はけろりとしているようだった。

そこで僕が先きに立って、その岸べには菖蒲のすこし生い茂っている、古びた蓮池のへりを伝って、塔のほうへ歩き出したが、その間もまた絶えず少女は妻に向って、このへんの山のなかで採れる筍だの、松茸だのの話をことこまかに聞かせているらしかった。

僕はそういう彼女たちからすこし離れて歩いていたが、実によくしゃべる奴だなあとおもいながら、それにしてもまあ何んという平和な気分がこの小さな廃寺をとりまいているのだろうと、いまさらのようにそのあたりの風景を見まわしてみたりしていた。

傍らに花さいている馬酔木よりも低いくらいの門、誰のしわざか仏たちのまえに供えてあった椿の花、堂裏の七本の大きな柿の木、秋になってその柿をハイキングの人々に売るのをいかにも