Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠6

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠6 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.112 Zeichen · 362 Bildschirme

Aozora Bunko

けれどもお銀様はそれを悪魔だとは思っておりません。たしかに梯子段の下まで来た人がそこで迷うて、二階まで上りきれないものだろうと思っています。その人というのは竜之助ではありません。竜之助とは全く別な人が下まで来て迷うて、ここへは上りきれないものだと思われてならないのです。お銀様が写経の心願を起したのは、甲府の躑躅ヶ崎の古屋敷で、神尾主膳の残忍な慾望の犠牲となって虐殺された幸内の菩提を弔わんがために始まったのが、中ごろから、法文をうつす殊勝な心よりも、今はかえって針で肉を刺す痛快味が、お銀様の身にこたえるようになりました。

「お嬢様、乱暴なことをなすってはいけません」

「いいのよ」

幸内の抑える声がしたかと思うと、お銀様はいっそう反抗的に、針を二の腕へブツリと強く刺し込みました。

「あ、痛!」

自分ながら、あんまり強く刺し込み過ぎたのを驚いて、あわてて引き抜こうとしたはずみに、ポツリとその針がなかばから折れてしまいました。ただ折れたんならいいけれど、半分折れたのは肉の中に食い止まっていて、折れたその半分だけが自分の指先に残りました。そこで、さすがにお銀様もハッとしましたけれども、折れた半分の針はどうしても抜くことができません。