Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠6

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠6 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.112 Zeichen · 362 Bildschirme

Aozora Bunko

竜之助はそれを憮然としてながめていたが、

「それは誰の着物だ」

と言って尋ねてみました。

「誰のといって、あなたわかっているじゃありませんか」

「拙者にはわからない」

「これ、ごらんなさいまし、郁太郎の着物でございますよ」

「え、郁太郎の?」

愕然として暗い行燈の下を見ると、女は縫糸の一端を糸切歯で噛みながら、竜之助の面を流し目に見て笑っています。暗い行燈が、いよいよ暗く、広い座敷が、あんまり広過ぎる。

「おわかりになりましたでしょう」

竜之助は、座右に置いた武蔵太郎の一刀を引寄せました。暗い行燈の下を、瞬きもせず見つめました。

明を失うてから久しいこと、切れの長い眼の底に真珠のような光を沈めて、甲源一刀流の名代の、例の音無しに構えて、じっと相手を見据えて、毛骨みな寒い、その眼の色の冴えを見ることがありませんでした。

「お前は浜だな」

「ええ、左様でございます、あなたとお別れしてから、ずいぶん久しいことになりましたね、今日は、あなたがおいでになるということですから、こうして待っておりました。あなたが恋しいのではございません、郁太郎がかわいそうですからね。だんだん寒くなってゆくのに、あの子は、綿の入った着物一つ着られまいかと思うと、それが心配で、眠れません、どうぞ、あなた、これを郁太郎に持って行って上げてくださいまし。