Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠6
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠6 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.112 Zeichen · 362 Bildschirme
「あッ」
と言って、寅吉は、その橋板に流されている血汐に辷りました。お危のうございますという口の下から、自分が危なく打倒れようとして橋の欄干に取縋った、ついその隣は、例のしがみついた屍骸でしたから、慄え上って飛び退きました。
「駒井の殿様、あんまり進み過ぎて、お怪我のないように」
寅吉は橋を渡りきることができないでいたが、駒井甚三郎は頓着なく、橋の向うの板留まで歩いて行きました。
そこで、ゆくりなく拾い上げたのは一口の刀であります。それを駒井が提灯の光で見ている時、今まで眠れるもののように静かであった大川の水音が、遽かにざわついてきました。潮が上げて来たものでもなく、雨が降り出したわけでもなく、水の瀬が開ける音がしたのは一隻の端舟が、櫓の音も忍びやかに両国橋の下を潜って、神田川へ乗り込み、この辺の河岸に舟を着けようとしているものらしい。拾い上げた刀を見ていた駒井は、早くもその舟を認めました。刀を照らした提灯の光で、今時分、河岸へつけようとした怪しの舟の何者であって、どこから来たものであるかを確めようとしました。
それを怪しいと見たのはおたがいのことで、ここまで乗りつけて来た小舟の船夫はまた、櫓を押すことを休めて、橋上を屹と見上げました。