Japanische Klassiker mit Furigana
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てんしゅかくのおと
天主閣の音
国枝 史郎
Lesen Sie 天主閣の音 (てんしゅかくのおと) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.941 Zeichen · 79 Bildschirme
「まあまあ夫れは此次にしよう。お互浅黄の頭巾を脱ぐと、気不味いことが起るかもしれねえ。……それは然うとお半の方だが、お前に何か目算があるなら、仲宜くした方が宜かろうぜ。女子と小人は養い難し、その辺から綻びが出来るかもしれねえ」
「ご忠告か、有難えなあ」俄に香具師は苦笑した。
「悪いことは云わねえ。機嫌を取って置きな。それには眠剤が一番いい。吹管を付けて献上して見るさ」
「うん、可いかもしれねえなあ」香具師は鳥渡頷いた。
「ではお別れとやらかそうぜ」
「おお大分遅くなった。では俺等は帰るとしよう。左様ならばご老体」
「もうお帰りか、復の逢う瀬」
「アッハッハッハッ芝居がかりだ。だが爺さんじゃあ色気がねえ」
「何んだ何んだ物を貰って、小言を云う奴があるものか」
「そこらが悪党と云うものさ」香具師は温室を出て行った。「じゃあ爺さん復来るぜ」
老人は返辞をしなかった。
香具師はスタスタと行って了った。
「やれやれ」と老人は呟き乍ら、寝台へトンと腰を下ろした。「俺の大役も済んだらしい」
ヒョイと頭へ手をやった。と、白髪の鬘が取れた。その手で顔をツルリと撫でた。と、若々しい顔になった。