Japanische Klassiker mit Furigana
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てんしゅかくのおと
天主閣の音
国枝 史郎
Lesen Sie 天主閣の音 (てんしゅかくのおと) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.941 Zeichen · 79 Bildschirme
家職まで怠らず、万事融通のためなり」
元文元年の正月であった。
宗春は城内へ女歌舞伎を呼んだ。
二十人余りの女役者の中で、一際目立つ美人があった。高烏帽子を冠り水干を着、長太刀をはいて、「静」を舞った。年の頃は二十二三、豊満爛熟の年増盛りで、牡丹花のように妖艶であった。
「可いな」と宗春は心の中で云った。「俺の持物にしてやろう」
で、彼は侍臣へ訊いた。
「あの女の名は何んというな?」
「はは半太夫と申します」
「うむ、そうか、半太夫か。……姿も顔も美しいものだな」
「芸も神妙でございます」
「そうともそうとも立派な芸だ」
「一座の花形だと申しますことで」
その半太夫は舞い乍ら、宗春の方を流眄に見た。そうして時々笑いかけさえした。媚に充ち充ちた態度であった。もし宗春が彼女の美に、幻惑陶酔すること無く、観察的に眼を走らせたとしたら、彼女が腹に一物あって、彼を魅せようとしていることに、屹度感付いたに相違無い。だが宗春は溺れていた。そんな事には気が付かなかった。
その日暮れて興行が終え、夜の酒宴となった時、座頭はじめ主だった役者が、酒宴の席へ招かれた勿論その中には半太夫もいた。