Japanische Klassiker mit Furigana
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てんしゅかくのおと
天主閣の音
国枝 史郎
Lesen Sie 天主閣の音 (てんしゅかくのおと) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.941 Zeichen · 79 Bildschirme
「お半の方様、お半の方様」取締りの老女の声であった。
「お半の方様はお休みで」こう香具師が代って答えた。
「おお、貴郎は香具師殿か。殿様はお居ででございましょうか?」
「へえへえお居ででございます。が、矢っ張りお休みで」
「直ぐにお起し下さいますよう」
「仲々お眼覚めなさいますまい」香具師は鳥渡嘲笑うように云った。
「よい夢の真最中一刻ぐらいは覚めますまい」
「それは何うも困りましたね。成瀬様が何事か急々に、言上致したいとか申しまして、只今おいででございます」
「成瀬様であろうと竹腰様であろうと、この夢ばかりは破れますまい。お待ちなさるようお伝え下され」此処で香具師はヘラヘラ笑った。
「が、それにしてもお前様は、どうしてそんな御寝所などで、何をしておいででございますな」老女の声は咎めるようであった。
「へえへえ私でございますかね、琥珀の夢、珊瑚の夢、極楽の夢、天国の夢、そういう夢の指南番、それを致して居りますので」
「何を莫迦な」と一言残し、老女の足音は向うへ消えた。香具師はペロリと舌を出した。
「これで仲々馬鹿でねえ奴さ」
二人の夢は覚めなかった。二度ばかり老女が聞きに来た。