Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.739 Zeichen · 23 Bildschirme
、田舎の進歩的な娘の間に、恐ろしい勢で流行していたものです。
紺絣の袷に小倉の袴をはいた、小作りで風采のあがらぬ藤波金三郎と、紫の袴に紋羽二重を羽織った美少女お染の旅は、思いも寄らぬ障害に出逢わしました。
その頃奥羽線はまだ開通しなかったので、秋田から東京へ出るためには、能代、大館を経て青森に廻り、東北線へ乗換えて、グルリと大廻りに、三十何時間を費して上野へ着かなければなりません。一般の旅客にとって、それはまことに我慢のならぬ厄介な旅でしたが、三等車の固い椅子に、向い合って席を取った金三郎とお染にとっては、――いや少くとも藤波金三郎にとっては、長い一生の歓喜と興奮を、この三十幾時間に圧縮したような、言いようもなく愉しい旅だったのです。
時候は五月の末、三日前から降り続いている雨は、若い夏の風物を洗って、窓の外は容々と煙るような景色でしたが、若いお染と向い合って、膝と膝とを摺り合せた車の中の情緒は、まことにホカホカと五体を環る血潮の温か味を感ずるような心持でした。
話は故郷の人達の噂、お染にとっては全好奇心を賭けた、まだ見ぬ東京のことから、相手の智能も理解も無視して、藤波金三郎は社会主義のことや、トルストイ風の無抵抗主義のことや、川上音二郎のシェイクスピーア劇のことから、名人小さんの小言幸兵衛のことまで話し