Japanische Klassiker mit Furigana
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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.902 Zeichen · 22 Bildschirme
口の中で何分宜しく、――そんなことをいったようでもありましたが、六郷左京はそれを極めて事務的に受けて、
「いや、御苦労で御座るな」
さっさと仕事を運びました。
檜材は早速荒削りされて、仕事場に立てられました。その間にモデルの多与里は、用意された衣裳を着けて、火見櫓の八百屋お七――存分に卑俗な題材であるにして、兎にも角にも、その頃の模範的な好尚にピタリとする、芝居振りの激情的を娘形になったのです。
六郷左京は張り切っておりました。人間は軽薄で、不良少年型であったにしても、男振りと彫物の腕だけは大したものでした。素より殿様芸に過ぎない、主君日向守の浮世絵などは眼中にありません。
幾度も幾度も図取りをしてポーズを直させた上、さて鑿を取って、いきなり檜の良材に彫んで行きました。其頃は油土もなく、塑像を木彫に移す方法も無かったことはいうまでもないことです。
モデルの多与里は、人形のようにお行儀がよく、人形のように綺麗でした。鑿を執る手を休めて眺めると、眼元の涼しさ、鼻筋の素直さ、その頃流行った、少し受け唇のあどけなさ、それにも優して、頬の肉付きの可愛らしさと、首から四肢へかけての、凝脂の美しさは、まことに比類もありませんが、それがどうしたことか、美し過ぎ、端正に過ぎて、なんか知ら一脈の物足らなさがあるのです。