Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
お前は歌ふな
お前は赤ままの花やとんぼの羽根を歌ふな
と高らかに歌った。その頃、私はその「歌」と題せられた詩の冒頭の二行に妙に心をひかれていた。それは、非常に逞ましい意志をもち、しかもその意志の蔭に人一倍に繊細な神経をひそめていた、その独自の詩人が自分自身にも向って彼の「胸先きを突き上げて来るぎりぎりのところ」を歌ったのにちがいがなかった。その勇敢な人生の闘士は、そういう路傍に生えて、ともすれば人を幼年時代の幸福な追憶に誘いがちな、それらの可憐な小さな花を敢えて踏みにじって、まっしぐらに彼のめざす厳しい人生に向って歩いて行こうとしていた。……
その素朴な詩句は、しかしながら私の裡に、云いしれず複雑な感動をよび起した。私はその僅かな二行の裡にもその詩人の不幸な宿命をいつか見出していた。何故なら、その二行をもって始められるその詩独特の美しさは、それは決してその詩人が赤まんまの花や何かを歌い棄てたからではなく、いわばそれを歌い棄てようと決意しているところに、……かえってこれを最後にと赤まんまの花やその他いじらしいものをとり入れているために――そこにパラドクシカルな、悲痛な美しさを生じさせているのにちがいないのだった。