Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
この位の洪水はいつもの事なんだからね」そう繰り返し繰り返し云って私を宥めながら、無理やりに私を寝かしつけた。……が、明け方になって再び私が目をさましたときは、家の中は只ならず騒々しくなっていた。私はゆうべ夢の中でのように見たかずかずの事を思い出し、縁側に飛んでいって見た。ゆうべまざまざと見た濁った水は、いまその縁と殆どすれすれ位のところにまで押しよせて来ていた。
父は弟子たちに手伝わせて、細工場の方に棚のようなものを作っていた。それはもう半ば出来かかっていた。母は縁側に出ている私を見ると、着物を手ばやく着換えさせ、「あぶないから、あんまり水のそばに行くんじゃないよ」と言ったきりで、すぐ又向うへ行って、忙しそうに皆を指図していた。
私はそこに一人ぼっちにされていた。そのあいだ、小さな私は、自分の前に起っている自然の異常な現象をまだよく判断する力もないのに、それに対してただ一人ぎりで立ち向わせられていたのだった。そのとき、その縁先きまで押しよせてきている黝い水や、その上に漂っているさまざまな芥の間をすいすいと水を切りながら泳いでいる小さな魚や昆虫を一人で見ているうちに、ふと私の思いついたものは、こないだ買って貰ったばかりの新しい玉網だった。