Japanische Klassiker mit Furigana
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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
或る日、見おぼえのある海老茶の袴をつけた、若い女の人が訪れてきた。私は宥めすかされて、又次ぎの日から幼稚園に行くことになった。
翌日、私は再びおばあさんに伴われて、こんどは三十分ほども前から、まだ誰もいない園内にはいって、皆の集ってくるのを、先きまわりして待っていた。最初は唱歌の時間だった。みんな一緒になって同じ唱歌を何べんも繰りかえして唱っていた。しかし私だけはいつまでも一緒にそれを唱えなかった。しまいには私は火のような頬をして、じっと下を向いたきりでいた。あんなに私の好きだったオルガンまで、その時間中、私には意地悪な音ばかり立てているように見えた。次ぎの遊戯の時間になると、他のオルガンが運動場の真ん中に持ち出された。戸外では、オルガンはそんな意地悪をしないのに決まっている。果してそれはいつもの単純な、機嫌のいい音を立て出した。みんなはそのオルガンのまわりに、手と手とつなぎながら、環を描いた。私だけは、ぶらんこの傍で待っているおばあさんのところに行って、その環の中には加わらずにいた。そうしてみんなが愉しそうに手をあげ足を動かし出すのを側から眺めていることに、その環の中に加わっては私には反って一緒に味えない、みんなとそっくり同じな愉しさを見出していた。