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Japanische Klassiker mit Furigana

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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

Lesen Sie 思い出す事など (おもいだすことなど) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.003 Zeichen · 113 Bildschirme

Aozora Bunko

金盥が枕に近く押付けてあったので、血は鼻の先に鮮かに見えた。その色は今日までのように酸の作用を蒙った不明暸なものではなかった。白い底に大きな動物の肝のごとくどろりと固まっていたように思う。その時枕元で含嗽を上げましょうという森成さんの声が聞えた。

余は黙って含嗽をした。そうして、つい今しがた傍にいる妻に、少しそっちへ退いてくれと云ったほどの煩悶が忽然どこかへ消えてなくなった事を自覚した。余は何より先にまあよかったと思った。金盥に吐いたものが鮮血であろうと何であろうと、そんな事はいっこう気にかからなかった。日頃からの苦痛の塊を一度にどさりと打ちやり切ったという落ちつきをもって、枕元の人がざわざわする様子をほとんどよそごとのように見ていた。余は右の胸の上部に大きな針を刺されてそれから多量の食塩水を注射された。その時、食塩を注射されるくらいだから、多少危険な容体に逼っているのだろうとは思ったが、それもほとんど心配にはならなかった。ただ管の先から水が洩れて肩の方へ流れるのが厭であった。左右の腕にも注射を受けたような気がした。しかしそれは確然覚えていない。