Japanische Klassiker mit Furigana
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おもいだすことなど
思い出す事など
Lesen Sie 思い出す事など (おもいだすことなど) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.003 Zeichen · 113 Bildschirme
妻が杉本さんに、これでも元のようになるでしょうかと聞く声が耳に入った。さよう潰瘍ではこれまで随分多量の血を止めた事もありますが……と云う杉本さんの返事が聞えた。すると床の上に釣るした電気灯がぐらぐらと動いた。硝子の中に彎曲した一本の光が、線香煙花のように疾く閃めいた。余は生れてからこの時ほど強くまた恐ろしく光力を感じた事がなかった。その咄嗟の刹那にすら、稲妻を眸に焼きつけるとはこれだと思った。時に突然電気灯が消えて気が遠くなった。
カンフル、カンフルと云う杉本さんの声が聞えた。杉本さんは余の右の手頸をしかと握っていた。カンフルは非常によく利くね、注射し切らない内から、もう反響があると杉本さんがまた森成さんに云った。森成さんはええと答えたばかりで、別にはかばかしい返事はしなかった。それからすぐ電気灯に紙の蔽をした。
傍がひとしきり静かになった。余の左右の手頸は二人の医師に絶えず握られていた。その二人は眼を閉じている余を中に挟んで下のような話をした(その単語はことごとく独逸語であった)。
「弱い」
「ええ」
「駄目だろう」
「ええ」
「子供に会わしたらどうだろう」