Japanische Klassiker mit Furigana
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こいのでんしちろう
恋の伝七郎
山本 周五郎
Lesen Sie 恋の伝七郎 (こいのでんしちろう) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.650 Zeichen · 60 Bildschirme
渇きに気がついて、そっと炉の間へはいっていった。そこは湯茶の支度をする部屋である、彼は炉に掛けてある湯釜の蓋をとり、冷たいやつを柄杓で汲んで、呑もうと口へ持っていったとたん「ばか者、なにをする」とうしろから呶鳴りつけられた。次兄の門之助が立っていた。「柄杓へ口をつけて飲む馬鹿があるか、そんなに飲みたかったら表へいって泥溝の水でも飲むがいい、それが貴様には似合っているぞ」「そうしてもいいですよ」さすがに伝七郎もむっとした、彼は次兄から眼を外らしながら、「たぶん永井家の名誉になるでしょうからね」と云った、「なに、もういちど云ってみろ、貴様、きいた風なことを申して」「だって兄上が」「黙れ、口答えをすると殴るぞ」拳をつき出しながら近寄って来た。伝七郎は黙った。門之助は弟の顔を軽侮に耐えぬもののように睨みつけたが、小言を言う張合いもないといいたげに舌打ちをして、「朝食が済んだら木下に紙を出させて罫紙を刷っておけ」と命じた。「私がやるんですか」「おまえに命じるからはおまえがやるに定ってるじゃないか」「庄兵衛がいつも刷ってるんでしょう」