Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こいのでんしちろう

恋の伝七郎

山本 周五郎

Lesen Sie 恋の伝七郎 (こいのでんしちろう) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.650 Zeichen · 60 Bildschirme

Aozora Bunko

「庄兵衛には用があるんだ、おまえは遊んでいる体じゃないか、文句を云わずにはいと云ってやれ、二千枚ばかり刷るんだ、晩までだぞ」そして彼はさっさと去っていった、伝七郎はべそをかいたような顔で、しょんぼりと湯呑へ湯ざましを汲んだ。

朝食のあとすぐ、家扶の木下老人に細川紙を出して貰い、版木やばれんや色壺や皿や刷毛などを揃え、用部屋で罫紙を刷りに掛った。この頃は家にいるとよくこんな雑用を命じられる、永井家には十人ほど家士や下僕がいるので、その者たちにさせればよいようなことも、「伝七郎やれ」と押しつけられる、家士たちに対しても恥かしいし、同じ父の子で自分だけがそんな風に扱われることも情けなかった。おれが愚鈍だからだ、そう思って諦めてはいるが、時にはくやしくなって独りで涙をこぼすこともあった。……版木へ刷毛で紺を塗り、紙を当ててばれんで擦り、刷れたやつを剥がして重ねる、単調きわまることを同じ手順で二千回やらなければならない、半刻もするともうその単調さに飽き飽きしてきた、刷ったのを数えるとまだ二百枚にも足りなかった。「やれやれ」思わず溜息をついた