Japanische Klassiker mit Furigana
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あるしょうじょのしまで
或る少女の死まで 他二篇
室生 犀星
Lesen Sie 或る少女の死まで 他二篇 (あるしょうじょのしまで) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.554 Zeichen · 228 Bildschirme
よく表と二人で散歩のときによると、
「きょうはお母さんが留守なんですから、ゆっくりしていらっしゃいましな。」
などと言った。表はそういうとき、
「そう、では露助にもらった更紗をM君に見せてあげなさい。M君はあんな布類が大変すきなんだから。」
「そうですか。ではお見せしますわ。」
いろいろな布類のはいった交ぜ張りの、いかにも娘のもつらしい箱をもって来たりした。ちょうど露西亜の捕虜がいるころで、みんなこの茶店へ三時の散歩にはやって来たもので、なかにひどく惚れこんでいるのもいた。
「これなんぞ随分きれいでしょう。」
それは真正のロシア更紗で、一面の真紅な地に白の水玉が染め抜かれてあった。なかにはこまかな刺繍を施した布面に高まりを見せた高価なハンカチなどがあった。それから古い銀の十字架細工のピンなど、実に立派なものが多かった。
表はそんなとき、
「戦争にゆくのによくこんなハンカチなぞ持っていたものだね。やっぱり露西亜人はのんびりしているね。」と言った。私は、
「そして捕虜がいつも来るんですか。」とたずねると、
「え、散歩の時間になりますといらっしゃいますの。」
表に気をかねてお玉さんは黙った。