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Japanische Klassiker mit Furigana

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ししょ

戦国武士道物語 死處

山本 周五郎

Lesen Sie 戦国武士道物語 死處 (ししょ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.176 Zeichen · 33 Bildschirme

Aozora Bunko

「おきかせ下さい父上、いかなるご所存でかような未練なおふるまいをなさったのでござります、父上はそれほど命が惜しいのでござりますか」

「そうだ、……命は惜しい」

吉信はまた北の夜空をみまもりながら、水のようにしずかなこえで云った、

「いったんの死はむずかしくはない、たいせつなのは命を惜しむことだ。人間のはたらきには名と実とがある、もののふは名こそ惜しけれ」

「父上もそれをご存じでござりますか」

「その方はどうだ」

はじめて吉信はふりかえった。五十五歳、鬢に霜をおいて、ふかく頬のおちくぼんだ彼の面上に、抑へつけているはげしい意力が脈うっていた。吉信はわが子のまえに坐り、噛んでふくめるような口調で云いはじめた。

「名を惜しむということを、そのほうはよくよく知っているか、信次。もののふは名こそ惜しけれとは疋夫も口にする、しかし名にも虚名というものがあるぞ、すなわち中身のない名だ、名あって実のともなわざることを云う。……父がごれんみんをもって命を助り、降参人となっておん旗本に加わったのは、おのれの命ひとつが惜しかったからではない、この君こそ天下の仕置たるべき人、この君こそ身命のご奉公をつかまつるべき人と思ったからだ」