Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 176.911 Zeichen · 353 Bildschirme
と、いつまでも窓に拗ねている姿をなだめた。
「…………」
於通はもう返辞をしない。
春の月は、軒ばを離れ、どこかの山桜がほの匂う。彼女は若い血のなかに、この春の夜をむなしく過ごしている身を口惜しげにもだえた。
いぶせき老婆、煤だらけな壁、埋め火のような夜の燈火。ああ耐えられない穴ぐらだと思う。これが自分に与えられた宿命の穴ぐらなのか。そんなはずはない。人はいのちの自由な生き方を求めて、悪いというはずはないものと思う。自分にはよい血液の両親をもって生れた由緒もある。人より立ちすぐれた才能もあると思う。また何よりは、自分は美しい容貌をもっている。なんで花も見ぬ蕾のまま冷たい尼院にいなければならないか。そこを出ればまたもこんな草深いあばら家に寝なければならないのか。――人のせいではない。運命は拓いてこそ行け。こうして朧の窓辺に不平ばかり思いつづけていたとて、たれが外から幸運の車をもって迎えに来よう。
「おいっ、おふくろ。……おふくろ。早いなあ。もう寝たのか」
その時、誰やらガタガタと、土間の雨戸をこじ動かして、わめく者があった。
「開けてくれい。おいっ、起きねえかよ、おふくろ。