Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.406 Zeichen · 381 Bildschirme
使番が四方に駈けまわって、引き揚げを令しても、帰らぬ将士が幾十人かあった。
しかし、敵の夥しい死者の数から見れば、味方の犠牲は、何十分の一でしかない。
わけて、敵ながら悲壮を極めたのは、井伊直盛の隊であった。直盛は、田楽狭間の義元の本陣を約十町ほど離れて警備に就いていたが、暴風雨のために、信長の軍が、前衛の警戒線を突破したことをまったく気づかなかった。
それと騒いだ時は、すでに敵は本陣へ突き入り、義元は討たれていたのである。直盛の将士は、その自責から最も奮戦力闘した。直盛が乱軍の中で自刃すると、以下の将士も皆、斬り死するか、自害して、一人も生き残らなかった。
その他、目ざましい最期を遂げて、敵とはいえ、眼に残って消えない武士がたくさんあった。戦い果てて、
(われ彼に勝つ)
と、知ると共に、武士の心には、そうした床しい敵の働きぶりが、味方の得意な顔以上、眼に残った。いつまでも心に刻まれて、暗黙の中に、追慕されていた。
(惜しい敵だった)
(よい死に方だった)
口には出さないまでも、あすはわが身にもあることと思うのだった。そして、今さらのように、
(よい御主君を持ち得たるものかな)