Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.406 Zeichen · 381 Bildschirme
彼の空想は今、途方もないところへ飛んでいた。それは三州岡崎城であった。岡崎城の向背がどう傾くか? これがこの頃の彼の頭脳にあるいちばんの興味であった。それを考えると、こよいの花嫁が、あしたの朝、自分にどういう言葉をいうか、どんな姿で自分に朝のあいさつするだろうか? ――などと空想するよりも、もっと大きく心を囚われてしまうのだった。その岡崎城は今、
(今川へ向くかな?)
とも思われ、
(御当家に傾いて来るかな?)
とも考えられ、岐路の運命にあるものだった。
去年、桶狭間の役に、今川家が大敗して後、三州岡崎の松平家というものは、
――従来どおり今川家に加担で通すか。
――今川家にも織田家にも属せず、この際敢然、孤立を表明するか。
――織田家と和協の道をとるか。
の三つの方策に当面して、遅かれ早かれ、そのひとつを選ばなければならない立場に置かれているのであった。
年久しく、松平家は、今川家という大樹に拠って存立して来た寄生木であった。その根幹は桶狭間で仆れたのである。自立するにはまだ力が足りないし、今川義元の亡き後の今川家そのものも、遺子の氏真も恃むに足りないものだった。