Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.406 Zeichen · 381 Bildschirme

Aozora Bunko

娶う前に観ていた以上どうしても人間が出来ている。浅野家の庭訓や環境のよさにもよろうが、当人の素質そのものが、もとより恋の対象だけにしかならないお人形ではなかったのだ。へたをするとこの女房に愍れまれる良人になり終る惧れすらある。いや宜しい。こういう女房が後詰にあれば、良人は前面に全力を出すことができる。大いに生涯可愛がってやろう。

具足を着け終ると、

「では、お心おきなく」

寧子は、神酒の土杯と、勝栗勝こんぶとを乗せた三宝をそろえて出した。

「留守、たのむぞ」

「はい」

「舅御にも、ご挨拶の暇もない、よしなに其女から」

「母はおや屋を連れて津島へ詣で、まだ戻りませぬ。父はお城の留守詰を仰せつかり、こよいから夜も帰宅せぬと先刻言伝てがござりました」

「さびしゅうないか」

「い……い、いえ」

さし俯向いた。――しかも泣いてはいない。良人の兜を膝に持って、ただ重げな花のすこし風を耐えるに似ていた。

「よこせ」

兜を取って、無造作に藤吉郎は頭にいただいて緒を結んだが、その時、馥郁たる伽羅のにおいが全身に沁みとおった。彼はニコと寧子の顔を見ながら、伽羅の香をかたく結んだ。