Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 180.256 Zeichen · 361 Bildschirme

Aozora Bunko

日吉は、口にいっぱい唾液をためながら、猫の飯と猫に見恍れていた。

「…………」

彼には、飯が与えられそうもない。中村の家へ行こうと心に決めた。そして空腹の身を起して、庭先を歩きかけると、閉じこめてある病人の居間から、耳ざとくその足音を咎めて、

「だれだッ」

と、呶鳴る声がした。

はっ――と立竦みに、日吉はすぐ、それが弾正と知ったので、日吉でございますと答えた。それから、ちょうどよい折とも思ったので、茶わん屋から暇を出されて帰って来たことも、ついでにそこから告げた。

「おえつ。そこを開けろ」

と、弾正の声が内でする。

けれど彼の妻は、夕方の風がはいって冷えるとまた、傷口が痛むからと、しきりに宥めているらしく、そこの障子は開こうともしないのである。

すると、弾正が、

「ばかッ、十日や二十日、生きのびたとて、何になる。開けろッ」

と、ふたたび癇癪を起したので、おえつは、泣く泣く障子をひらいて、

「日吉、御病気にさわるから、ごあいさつしたら直ぐ帰るんですよ」

「はい」

日吉は立ったまま、病室へ向ってお辞儀をした。弾正清忠は、蒲団を重ねてそれへ重症の体を凭せかけていた。