Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 180.256 Zeichen · 361 Bildschirme

Aozora Bunko

「……へい」

日吉は答えたが、ちょっと、様子を計っていた。

この界隈の侍屋敷なら、問わずとも、斎藤家の家中とは知れきっている。それも、道三方の家臣ならよいが、義龍の直臣でもあったら、小気味がわるい。

「針売り、針を求めてつかわすと仰っしゃる。こっちへはいって来い」

求めてくれる人は、その若党ではないらしいのだ。いよいよ、気が進まなかったが、ぜひなく近づいて、

「ありがとうございます」

後に従いて、日吉は、潜りの内へはいった。

そこは裏庭らしく、築山の後を巡って従いて行く。かなり大身の屋敷とみえ、母屋は幾棟にもわかれ、建築の宏壮、泉石の清楚、日吉は足を竦めた。

誰だろう? 針を買ってくれるという当人は。

若党のことばでは、主人筋らしいが、これ程な屋敷に住む大身が、奥方であろうと、御息女であろうと、自身、針など求めるはずはない。また、外を呼び歩く物売りなどを近づけるわけもない。

「針売り」

「はい」

「暫時、そこで待っておれ」

若党は、彼を庭の一隅へ残して行ってしまった。――見ると、母屋からは、かけ離れた一棟がある。

その一棟は、下が書斎、上が書庫にでもなっているらしく、荒壁で塗り廻した中二階造りになっていた。