Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 180.256 Zeichen · 361 Bildschirme
「はい」
日吉は、なお、真面目に、
「わしにとれば、おっ母さんは、神様より仏様より、生きているだけになお、尊いおっ母さんでござります。ですから……」
「だまれッ」
一喝を投げて、十兵衛は、後はいわさぬ顔を示した。
「秘密の手紙ゆえ、噛み捨てたのであろう。それだけでも、不審な奴、さてこそ!」
「いえ、いえ。お考え違いをしては困ります」
日吉は、あわてて、手を振って云い足した。
「神仏よりもありがたい、おっ母さんの手紙を、持っていて、つい洟をかんでしまったり、往来へ捨てて、人の足に踏まれたりしたら、勿体ない、罰があたる。――そう思うので、いつも私は、喰べてしまうのが癖なんです。嘘ではございません、遠く離れている母の文字、喰べてしまいたいほど、懐かしいのは当り前でございまする……」
嘘だ。虚言だ。
十兵衛は見ぬいていた。
しかし、嘘にせよ、人並すぐれた嘘をいう男もあるもの――と思った。
それと――
十兵衛にも、故郷に遺してある母があった。郷里、美濃国恵那郷明智ノ庄の明智城にひとりの老母が待っている。
(嘘も、根からの嘘はいえないものである。母の手紙を喰べてしまったなどということは、出たら目でも、この猿に似た小男にも、親はあるにちがいない)