Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 180.256 Zeichen · 361 Bildschirme

Aozora Bunko

「少しは、水なと汲んだり、姉の手助けなとしなされ」

ぐいぐいと曳いて、土間口の方へ歩き出した。

「嫌でい。嫌でい」

日吉は、母と争って、手と手を引っ張り合いながら叫んだ。しかし、地に踵を踏ンばっても、彼の母は、彼の歩みを、自分の意志のほうへ引き寄せずにおかなかった。

「――やだよウっ。嫌だってえに。おっ母の馬鹿。嫌でい!」

すると、竹窓の中から、老人のような咳声が、炉けむりと一緒に洩れてきた。

父の声を聞くと、日吉は首をすくめて黙ってしまった。父の弥右衛門はまだ四十がらみであったが、長年、廃人同様な起臥をしているので、咳の声まで、五十過ぎの人みたいに皺嗄れていた。

「……吩咐けてやりますぞ。余り母を困らすと」

母は、そっと手を弛めて云った。

解かれた手を顔へやると、日吉は眼をこすって、しゅくしゅく泣き出した。母はこの駄々坊を持て余し顔に、

(この子はまア……)

と見つめているうち、自分も共に、泣いてしまいたくなった。

「――お奈加、お奈加。なにをまた日吉と喚き合うているのだっ。見ッともない。自分の子と争って、泣いているたわけがあるか」

暗い屋根裏の見える窓の内でまた――病人特有な、癇のたかい、弥右衛門の声だった。