Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 180.256 Zeichen · 361 Bildschirme
一歩、家庭を出れば、もう生きて帰るか帰らぬか、心は主君と戦にのみあって、妻には、余りにも素気なくさえ見える良人だった。
「あんなにも、男は、功名ばかりが、大事なものかしら!」
おえつは、後ろ姿を見送って、また幾月かの淋しさを思った。用事がすむと、彼女は早速、姉の子の日吉を連れて、中村へ出かけて行った。
その途中。
「おう、これは」
と、向うから来て、おえつに丁寧なあいさつをした人がある。
商人だろう。しかし商人にしては、大家の主人にちがいない。きらびやかな短羽織を着、脇差を一腰さし、小桜革の足袋を穿いて、四十がらみのにこやかな人だ。
「加藤様の御寮人ではございませぬか。どちらへお越しなされますな」
懇意とみえておえつは、
「中村の姉の家まで参ります。この子を連れて――」
と、日吉を抱えよせた。
「ホ……。その坊んちでござるかの。光明寺から追われたお小僧というのは」
「もう、お耳にはいりましたか」
「いや今も実は、そのことでの、ちょっと寺まで行って参ったので」
日吉は、何だか間が悪くなって、眼をきょときょとしずにいられなかった。坊ンちと呼ばれたのは、生れてから初めてである。