Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 180.256 Zeichen · 361 Bildschirme
すると、側にいた手代が、日吉の寝衣の包に、二升の塩を添えて、
「これも、御寮人さまのお情けで、おまえに下さるとのことだ。お礼はいわないでもいいから、ここからすぐに出て行きなさい」
「……?」
日吉は、茫然としていた。
かっと熱いものが顔にのぼって来る。その眼は、於福へとびつきそうな怒りをあらわした。
「……分ったかい」
於福は、後ずさりながら、手代の手から寝衣包と、塩の袋を取って、地へ置くと、あわてて行ってしまった。
日吉はなお、その姿へ、飛びかかって行きそうな眼をやっていたが――その眼には涙がいっぱいにあふれて来て、何もかも見えなくなってしまう。
野火のように暴れ狂ってやりたい憤りと――同時に彼の頭には、すぐ母の悲しげな顔が泛んでいた。
(こんどまた、奉公先から出されたら、藪山の加藤殿のお顔にもさわるし、この母も、世間へ恥かしゅうて、誰へも顔向けがならぬぞよ――)
茶わん屋へ来る前に――そういって涙ぐんだ母の顔が――あの貧乏と、子を生むたびに、目立って窶れてくる母の姿が――彼の憤怒する血の中に、脆い涙と、情痴な洟を啜らせて、その身を、どうしていいか分らないように、しばし棒立ちにさせていた。