Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しゅんちゅう 

春昼・春昼後刻

泉 鏡花

Lesen Sie 春昼・春昼後刻 (しゅんちゅう) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.079 Zeichen · 102 Bildschirme

Aozora Bunko

三

大なる蟇の、明け行く海から掻窘んで、谷間に潜む風情である。

三

されば瓦を焚く竈の、屋の棟よりも高いのがあり、主の知れぬ宮もあり、無縁になった墓地もあり、頻に落ちる椿もあり、田には大な鰌もある。

あの、西南一帯の海の潮が、浮世の波に白帆を乗せて、このしばらくの間に九十九折ある山の峡を、一ツずつ湾にして、奥まで迎いに来ぬ内は、いつまでも村人は、むこう向になって、ちらほらと畑打っているであろう。

丁どいまの曲角の二階家あたりに、屋根の七八ツ重ったのが、この村の中心で、それから峡の方へ飛々にまばらになり、海手と二、三町が間人家が途絶えて、かえって折曲ったこの小路の両側へ、また飛々に七、八軒続いて、それが一部落になっている。

梭を投げた娘の目も、山の方へ瞳が通い、足踏みをした女房の胸にも、海の波は映らぬらしい。

通りすがりに考えつつ、立離れた。面を圧して菜種の花。眩い日影が輝くばかり。左手の崕の緑なのも、向うの山の青いのも、偏にこの真黄色の、僅に限あるを語るに過ぎず。足許の細流や、一段颯と簾を落して流るるさえ、なかなかに花の色を薄くはせぬ。

ああ目覚ましいと思う目に、ちらりと見たのみ、呉織文織は、あたかも一枚の白紙に、朦朧と描いた二個のその姿を残して余白を真黄色に塗ったよう。