Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しゅんちゅう 

春昼・春昼後刻

泉 鏡花

Lesen Sie 春昼・春昼後刻 (しゅんちゅう) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.079 Zeichen · 102 Bildschirme

Aozora Bunko

先ず神田辺の事でござりまして、ええ、大家の店前にござります。夜のしらしら明けに、小僧さんが門口を掃いておりますると、納豆、納豆――)

と申して、情ない調子になって、

(ええ、お御酒を頂きまして声が続きません、助けて遣っておくんなさい。)

と厭な声が、流れ星のように、尾を曳いて響くんでございますの。

私は何んですか、悚然として寝床に足を縮めました。しばらくして、またその(ええ、ええ、)という変な声が聞えるんです。今度は些と近くなって。

それから段々あの橿原の家を向い合いに、飛び飛びに、千鳥にかけて一軒一軒、何処でもおなじことを同一ところまで言って、お銭をねだりますんでございますがね、暖い、ねんばりした雨も、その門附けの足と一緒に、向うへ寄ったり、こっちへよったり、ゆるゆる歩行いて来ますようです。

その納豆納豆――というのだの、東京というのですの、店前だの、小僧が門口を掃いている処だと申しますのが、何んだか懐しい、両親の事や、生れました処なんぞ、昔が思い出されまして、身体を煮られるような心持がして我慢が出来ないで、掻巻の襟へ喰いついて、しっかり胸を抱いて、そして恍惚となっておりますと、やがて、些と強く雨が来て当ります時、内の門へ参ったのでございます。