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Japanische Klassiker mit Furigana

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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(三)

岡本 綺堂

Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(三) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 201.612 Zeichen · 405 Bildschirme

Aozora Bunko

、かれらはやはり油断していると、男はつづけて叫んだ。

「潮が来る。颶風が来る」

かれの声はだんだんに激して来た。かれはいよいよ物狂おしいようになって、そこらじゅうを駈けまわって叫びあるいた。

「颶風がくる。潮がくる」

颶風が襲って来るのと、潮が満ちて来るのとは、別問題でなければならなかった。それを知っている者はやはり笑っていたが、彼は諸人の危急がいま目の前に迫っているかのように、片手に空を指さし、片手に沖を指さして、跳りあがって叫びつづけた。

「颶風がくる」

跳り狂って飛びまわっているうちに、彼は砂地の窪んだところへ足をふみ込んで、引き残った潮溜りのなかに横ざまに倒れた。倒れながらも彼はやはり其の叫び声をやめなかった。

「この気ちがいめ」

気の早い者は腹を立てて、そこらに転がっている貝殻をつかんで投げつけた。ある者は砂をつかんで浴びせかけた。それでも彼は口をとじなかった。貝殻がばらばらと飛んでくるうちに、その大きい一つが彼の額にあたって左の眉の上からなま血が流れ出したので、血に染み、砂にまぶれた彼の顔は物凄かった。かれはその眼をいよいよ光らせて、颶風と潮とを叫んだ。