Japanische Klassiker mit Furigana
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ますおとし
枡落し
山本 周五郎
Lesen Sie 枡落し (ますおとし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.765 Zeichen · 67 Bildschirme
おみきは仕事台の前でゆっくりと振り向いた。男は少しおろかしいほど人の好い目つきで、自分の言葉の真実さを強めるように、大きく頷いてみせた。
――そうなんです、生き証人がいるんです、と男は云った。自分で云うのもなんだが、あっしはけちな野郎で、ほんのつまらねえしくじりのために伝馬町へ送られ、ひと月めえやっと御放免になったんですよ。
どんな罪で牢へ入れられたか、そして三十日ほどまえに牢を出てからなにをしてきたか、いまどんな仕事をしているか、ということについてもまったく触れなかった。それが自然なのだろう、とおみきは思った。こういう人たちは自分のことは話したがらない、話すとすれば嘘か、巧みな拵えごとになってしまう。それは良人の千太郎や、そのなかまたちのことで、飽き飽きするほど思い知らされていた。しかしかれらはなかまのことになると、驚くほどしんけんになることがある。いま男は千太郎が無実であり、その現場を見た生き証人がいる、ということには真実らしさが感じられた。自分のことは語らず、あにいと呼ぶ千太郎のために、なにかをしようという言葉には、おみきも心を動かされずにはいられなかった。